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鳥取市民合唱団定演を聴く

昨夜、鳥取市民会館で32回目の定演を聴いた。
2012年は創立50周年を迎える伝統の重みは如何に。
ステージの面々には既に顔なじみでない人も随分増えた。
だが1962年(昭和37年)創団間もなく入団した
大先輩がまだステージに立っている姿を見るにつけ、
感慨ひとしおの思いにひたる。立派なことだ。
僕などは1979年~1994年の僅か15年在団に過ぎないわけだから
ただただ頭の下がる思いだけである。

さて、演奏会について率直な感想を書いてみよう。
二年ぶりの合唱団の勢いは如何なものだろうか。
相変わらず男性陣が視覚的にも少ないのが気になる。
旧い団員は随分年を重ねたものだ。
だが聴くほどに二年間の蓄積がじわじわと表出してくるのが実感される。
今回の目立つ特徴はア・カペラが大変多く、
このことは取りも直さず大変意欲的な姿勢が窺えた。

第一ステージはオール、ア・カペラに感服。
最初に「埴生の宿」「旅愁」「ロンドンデリー」で始まる。
余りにもなじみ深い曲でそれだけにむしろ難しい。
やや声の伸びが堅くて緊張の程が伝わってきた。
このステージで評価したいのは
武満徹の作詞・作曲「◯と△の歌」と「ちいさな空」だった。
僕も歌ったことがあるが、やさしいように見えて大変難しかった記憶がある。
不協和音的な響きがことに重要で難しい部分だ。
だが想像以上にこの二曲を捉えていた。お見事!
ただ要所要所で男性陣の手薄さが負担になってか
合唱と言うよりもソロっぽく聞こえてしまうのは惜しかった。
だがその手薄さを補おうとする努力と誠実に感動した。

第二ステージはピアノ、管弦楽、シンセサイザーが加わった新機軸の曲に挑戦した。
星野富弘の詩にスティーブ・ドブロゴス作曲という。
これは聴いたことがない。
詩はローマ字で表記されていると言うことで
1.NICHINICHI-SO
2.AKI NO AJISAI
3.ZAKURO
4.INOCHI
5.KOSUMOSU
の5曲だった。
ジャズ風手法を取り入れ、
何曲かは指揮者自体がボンゴでリズムを取りながら進行する。
軽妙なリズムに乗って合唱団も力を抜いた発声で力み無く歌っていたようだ。
初聴だがこうした演奏構成が出来るならば今後再演も面白いと思った。

第3ステージはア・カペラとピアノ伴奏の混在ステージ
1. 北原白秋作詩、柴田南雄作曲
2.「ア・カペラのためのELEGIA」より
  秋のスピード 春のガラス  北園克衛作詞、木下牧子作曲
以上は合唱コンクールでの演奏曲でア・カペラで歌われた。
コンクールで歌われただけに練度も高く
3.団員の独唱で「風をみたひと」 クリスティナ・ロゼッティ作詞、木下牧子作曲

さて、次からはピアノ伴奏で混声合唱の良さを発揮する聴き所なのだが。
4.混声合唱とピアノのための「もうひとつのかお」より
  あなた 谷川俊太郎作詞、鈴木輝明作曲
  ピアノ伴奏が加わると合唱はやはり安定する。
  探るような気配が消え失せて安心して聴けてしまうのだ。
5.手紙 
  これはアンジェラ・アキの曲で一昨年のNHK音楽コンクールの
  課題曲としていやという程聴いている。
  全国でフィーバーしたのをはじめ海外でも受けた曲だ。
  軽妙さと手紙に込められた熱い思いが伝わってきた。
6.虹 森山直太朗/御徒町凧 作詞・作曲 信長貴富編曲
  エンディングとして軽い曲を持って来た演出を持って来た場合、
  客席が盛り上がりにくい。だから合唱の出来如何に関わらず
  どうしても拍手の持続が難しくなる。

第2ステージ以降、指揮者が解説を行いながら進行する試みだった。
これはよい面と同時に演奏会に水を差してしまうリスクも背負っている。
正直屋や冗長に過ぎた嫌いは否めない。
もっと計算された内容で要領よくやらねばお客がだらける傾向が見られた。
ちなみに隣席の顔見知り女性は言った「ちょっと長いわね- ステージの人は厭だよ」
それからもうひとつ「陰アナの間の取り方が下手ねー」
僕もちとかったるいと思った。

歯に衣を着せぬことも言ってしまったが、実は全体として指揮者と団員の結びつきが
固まってきたな-と感じたし、たゆまざる努力の成果が確実に見られたステージだった。

合唱の広がりは果てしなく広く奥行きはとめどなく深い。
透明で重厚なハーモニーの追求は一歩もゆるがせに出来ない。
これが達成される過程で音楽表現も豊かになって合唱の楽しさを倍々にして行く。
今後も一丸となって感動する合唱を披露してと願っている

改装なった市民会館だが響きは豊穣とは言えない。
ポーンと放たれた音の広がりが感じられない。
強いて言えば普通かな。
   













もうひとつ番外として
伝統的なことではあるが、
鳥取市長がのこのこ現れるのには客席に受けていない筋も有ることだった。
口ではお上手をおっしゃるが、現実的視点では首をかしげる。

by tomiot3 | 2010-10-10 21:33 | 音楽よもやま | Trackback | Comments(0)