人気ブログランキング | 話題のタグを見る

妻の友

妻の中学、高校を通じての仲良し仲間の一人に榮田治子さんが居る。
妻の話によるとクラスが変わっても以前と変わらぬ友だち付き合いをし、
時には妻の家にも遊びに来ていた。
昨年の梨の頃、4Lと言うデッカイ二十世紀梨が手に入ったので、
今が住まいの東京調布に送ってあげた。
そのお返しに一冊の本が贈られてきた。
それは「榮田治子 歌集 原林のまなびや」だった。
妻の友_e0166734_20172244.jpg

彼女のご主人はお勤めが国際協力事業団(JAICA)だった。
だから任地が南米と言うことになったようだ。
お子さんさん共々パラグァイやブラジルのアマゾンへと赴いた。
お子さん達の教育には特に苦労されたことがこの歌集から伺える。
妻にも2度3度便りが有ったのだが、楽しいこと良いことばかりが書かれていた。
“手紙もそうだけど、いつ会っても良いことばかりしか言わない、愚痴なんて聞いたことが無い”
“この歌集を読んで榮田さんの本当の苦労を初めて知った”とも言っている。

ここで何首か紹介してその苦労や喜びの一端を紹介したい。
原風景
南米も日本も転勤は一家五人想い出通う道づれ家族
豊かなる熱帯雨林のアマゾンは生命の泉地球の記憶
冬の季
蟻の巣に足捕られ入りおさな児の危機一髪と背負われて来し
四十五キロ
友情の橋を渡れば外つ国のブラジル近し四十五キロ
マラリアに似た熱続く一週間未知の病に不安の募る
瀑布
郷国は心に近く留めいし地球の裏に渡り暮らせど
学校
小一と小二の転校戸惑いつつアメリカン・スクールに素直に通う
隣街オリンダ
オリンダの文化遺産の痛ましく奴隷市場に奴隷牢獄
ジャングル
ベレンより二百五十キロ南西に赭土ほこり巻き上げて着く
原林のまなびや
午前には母子取り組む通信の教科に励む原林のまなびや
三時間の発電は止みガス灯で読書する少年たくましく見ゆ
道草
一世より伝わりし躾なつかしく二世につつしみ深き娘のあり
味噌漬
糠床に替わりてつくるバナナ床日系人の深遠の知恵

さーっと目を通しただけの事ながら、一首一首に背景の浮かぶ様が有って、
これだけの紹介では中途半端の気がする。
妻と同級ならば今既におばあちゃんの域、
他の同級生と共に妻が旧交を温める機会をつくってやれればと想った。

実は今日、田舎の畑に行く途中、鳥取市から八頭町に入ってすぐ、小さな峠の掘越にさしかかる。
因美線の東郡家という小さな無人駅が有って、その脇を国道29号線が走っている。
その駅を見てふと妻の友人の榮田さんを思い出した。
榮田さんの故郷である村は駅から約Ⅰキロ南に下った旧道沿いである。
歌集の目次最終の「墓参」最後の歌が印象に残っていた。
「無人駅の二輌ディーゼルを待つホーム置き忘れたる日ありてわが佇つ」
情景は違うが石川啄木のふるさとを想う歌も浮かぶ。
「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」

妻は良い友を持っている。
概ねその友は控えめな人が多く、榮田さんのこの様な活躍を妻はどの様に感じたのだろうか。
きっと芯の強い根性の座った人だろう。

近場の日本海新聞に期せずしてこの詩集が紹介された。
参考にされたし。
妻の友_e0166734_20272249.jpg

by tomiot3 | 2014-03-19 20:38 | よもやま・つれづれ | Trackback | Comments(0)