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合唱は平和への梯

今朝のクラシック倶楽部は日本の合唱曲,聴きごたえ十分の朝だった。
昨日は地元女声合唱団の公演を聴いたばかり、ここ二日間は合唱漬けということか。
木下牧子作曲 谷川俊太郎作詞「春に」で始まる。
演奏は東京混声合唱団/指揮山下一史 ピアノ斎木ユリ
2曲目は「筑後川」

この曲は私にとっても思い出深き合唱曲。
昭和54年(1979年)に鳥取市民合唱団に入団したのだが、合唱コンクールでの自由曲が、
合唱組曲の終曲「河口」だった。
“フィナーレを こんなにはっきり予想して 川は大きくなる・・・”
今でもこんなにハッキリ覚えている。
筑後川はいづれ定期演奏会で全曲を歌うことになる。

丸山 豊作詞、 団 伊玖磨作曲
5曲からなり、阿蘇を源流として有明海に注ぐまでの雄大な筑後川への有りったけを歌った大曲。
第1曲 みなかみ  いま生まれたばかりの・・・  
第2曲 ダムにて  いそいそと瀬を走り  靑葉をくぐり若葉をくぐり もだえて右に左にうねり 
          愛の水かさが膨らんだところで 非情なダムにせきとめられる。・・・
        (非情なダムと言うところで私はいつも引っかかる。自身水力発電技術者だった
          ので、川を見れば、流れ、地形など即座に観察して、うんキロワットの発電
          が可能と計算してしまう。今でも旅中に川を見ると、本能が作動する。
          ダムは絶対に不必要だとは断言できないが、自然エネルギーであるとは言え、
          川をせき止めること自体は自然征服で有り、清流を奪い、生態系を壊す自然
          破壊で有ると思っている。)
第3曲 銀の魚   しずかにしずかに 楠の木かげを漕ぎだした・・・
第4曲 川の祭   祭よ 川を呼びおこせ・・・
第5曲 河口    フィナーレを フィナーレを こんなにはっきり予想して
 川は大きくなる フィナーレを華やかに飾りながら 川は大きくなる
終曲「河口」は合唱人にとっての愛唱曲のひとつで、様々な場面で歌われてきた。

この日の最後は、大木惇夫作詞 佐藤眞作曲
混声合唱とピアノのためのカンタータ「土の歌」
これ程、私の合唱生活に深く差し込んできた音楽はない。
鳥取市民合唱団時代、作曲者佐藤眞氏を合宿に招いて指導を仰ぎ、全曲演奏を行った。
合宿は東浜の民宿を借り切って行っていた。夏の盛りのムンムンとした雰囲気が懐かしい。
当時の若手の頑張りがすごかった。あのような情熱はどこから湧いてきたのだろうか。

今日の演奏は、オリジナルのオーケストラ演奏によるもの。
初演のエピソードも佐藤眞先生からうかがったりしていた。
初演は紆余曲折があって、岩城宏之指揮NHK交響楽団で行われた。
24歳の時の作品で、よくぞと思われる大曲で有り、その後音楽教科書の主要な位置を占め、
これほどまでに日本国中で歌われ、愛された合唱曲はないのでは。
またあらゆるところで歌われてきたので、自身歌った回数はおそらく100回を下るまい。
今日の演奏は山下一史指揮 東京フィルハーモニー 東京混声合唱団。
7章からなるカンタータ、各章の詩がすばらしいので冗長になるが、掲載する。
目を通して頂ければ、今の世を象徴している事がお分かりになると思う。
大地の恵みに感謝しつつも、文明に翻弄される人間の愚かさを呪い、原爆の悲劇を訴え、
天変地異におののきつつも、地上の平和を祈り、大地への感謝で締めくくる。
反戦でも有り、平和希求への強烈な祈りと訴えである。
地震津波などの天変地異、原発事故、核兵器の脅威、そして絶えることの無い戦争、
まさに今の世を歌っている。
文明の不安よ 科学の恥辱よ 人智のおろかさよ 
第1章 農夫と土   自然の恵みと神秘、土への感謝が込められている。
耕して 種を撒(ま)く土
人みなのいのちの糧(かて)を 創り出す土
耕して 種を撒く者
農夫らの 楽しみの種子(たね) 悲しみの種子
ともかくも種子がいのちだ
朝星(あさぼし)を見て 野良に出る
働いて 額に汗して
夕星(ゆうぼし)を見て 帰るのだ
種子をはぐくむ 土こそは
種子をまく者の 夢だ望みだ そして祈りだ
花さき実る 毎年の約束の 不思議さよ

第2章 祖国の土  人は皆土に生まれ、土に還っていくという意味の詩。
          行進曲風で、ショスタコヴィッチ/森の歌を彷彿とさせる。
ああ 大地
踏んでみて 寝転んでみて たしかな 大地
ああ まして祖国の土の尊さ
大空の星を仰いで
高く仰いで 歩け歩け
しかし 溝には はまるまい
山河(やまかわ)よ さくらの菊の 花咲く丘よ
顔上げて 堂々と 踏みしめて
この土を踏みしめて この土を護ろうよ 祖国の土を

第3章 死の灰  まさに原爆について訴えている。人間と科学の愚かさ空しさを歌っている。
世界は絶えて 滅ぶかと
生きとし生けるもの皆の
悲しみの極まるところ
死の灰の 恐れは続く
文明の不安よ 科学の恥辱よ 人知の愚かさよ
ヒロシマの また長崎の
地の下に泣く いけにえの 霊を偲べば
日月は 雲におおわれ
心は 冥府(よみ)の路をさまよう

第4章 もぐらもち  ここでも原爆が扱われており、もぐらに例えて人間が皮肉られている。
もぐら もぐら 土にもぐって日の目もみない
・・・・

第5章 天地の怒り  天災と人間悪について描かれている。
雷だ いなづまだ
嵐だ 雨だ 洪水(おおみず)
土手が崩れる 崖が砕ける 橋が流れる
樹も垣(かき)も 根こそぎにされる
濁流が家を呑む 人をさらう
地の上に 山脈(やまなみ)があり
地の上に 重みがある
地の下に 燃える火があり
地の下に 怒りがある
地の上に 絶えずかぶさる 人間悪よ
地の上のなげきは深い 長い年月(としつき)
火の山の爆発だ 地震だ 火事だ
溶岩が流れる 尾根が崩れる
落ちる なだれる 火の海だ 修羅の巷(ちまた)
逃げまどう人の すさまじい叫び
うめき のけぞる ころがる
煙突が倒れる 時計台が崩れる 荒れ狂う町

第6章 地上の祈り  
大地への想いと反戦の祈りが書かれている。
地の上に 花咲く限り
よろこんで日ごと営(いとな)
悲しみも耐えて生きよう
ああ 栄光よ
ああ 地の上に平和あれ

第7章 大地讃頌  これほどの大地の恵みへの感謝があろうか。讃頌つまり賛美の頌である。
母なる大地の ふところに
われら人の子の 喜びはある
大地を愛せよ 大地に生きる 人の子ら
その立つ土に感謝せよ
平和な大地を 静かな大地を
大地をほめよ たたえよ土を
恩寵の豊かな 豊かな大地  
われら人の子の 大地をほめよ
讃えよ 土を 母なる大地を
讃えよ ほめよ 讃えよ土を
 母なる大地を ああ
 讃えよ大地を ああ

佐藤眞先生とは、永いお付き合いとなって、国民文化祭合唱祭のメイン曲の
作曲をして頂くことに繋がった。
「ふるさとによる混声合唱と管弦楽のための幻想曲」をプロデュースできたことは、
大きなよろこびだった。
この縁が更に広がり、翌年の山形国文祭合唱祭でも佐藤先生がオリジナル作曲された。
また、山形合唱関係者とのお付き合いも懐かしい。
佐藤先生には「土の歌」をオケ版でやろうよ、と幾たびかお誘いを受けたが、
実現に至っていない。
東京芸大オケでというお話まであったのだが・・・。


  

美しい日本を歌う~日本の合唱曲 ▽【演奏曲】「春に」(作詞:谷川俊太郎、作曲:木下牧子)、混声合唱組曲「筑後川」(作詞:丸山豊、作曲:團伊玖磨)、混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「土の歌」(作詞:大木惇夫、作曲:佐藤眞)▽【出演】東京混声合唱団/斎木ユリ(ピアノ)/山下一史(指揮)/東京フィルハーモニー交響楽団▽【収録】2014年3月3日/NHKスタジオ

楽曲

  • 「“春に”」
    (作曲)木下牧子、(合唱)東京混声合唱団、(ピアノ)斎木ユリ、(指揮)山下一史
    (3分38秒)
    ~NHK CT-101~

    「混声合唱組曲“筑後川”」
    (作曲)團伊玖磨、(合唱)東京混声合唱団、(ピアノ)斎木ユリ、(指揮)山下一史
    (16分51秒)
    ~NHK CT-101~

    「混声合唱とオーケストラのためのカンタータ“土の歌”」
    (作曲)佐藤眞、(合唱)東京混声合唱団、(管弦楽)東京フィルハーモニー交響楽団、(指揮)山下一史
    (26分42秒)
    ~NHK CT-101~

by tomiot3 | 2016-05-30 11:07 | 音楽よもやま | Trackback | Comments(0)